日本特殊陶業株式会社様 設計コラボレーション製品データ管理システム PTC Windchill・ハイエンド3DCADシステム PTC Creo(Parametric、Direct)の導入事例やシステム構築例を紹介|システム構築やトータルソリューションをお探しなら、日立ソリューションズにお問い合わせください。

設計コラボレーション製品データ管理システム PTC Windchill・ハイエンド3DCADシステム PTC Creo(Parametric、Direct)の導入事例

日本特殊陶業株式会社様

紙図面での設計情報管理をPLMと3次元CADでデジタル化

機械工具を製造・販売する日本特殊陶業株式会社の機械工具事業部は、「設計作業効率向上」「設計品質向上」「設計提案力向上」「ペーパーレス」をめざして、約6万品番の設計情報の統合管理に着手。紙図面での管理から「Windchill」による製品データ管理に移行するとともに、3次元CADツールとして「Creo」を採用。さらに、設計部品表(BOM)も作り上げました。営業からの紙での依頼や設計内の承認ワークフローを電子化したことで、業務プロセスの可視化も進んでいます。

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課題
導入後
作業効率・品質・提案力のすべてを向上させたかった
3次元CADツールの設計により、作業効率が倍以上に高まり、設計の品質も安定化
設計情報の管理法が紙図面だった
設計情報管理のデジタル化で管理コストを抑制し、デジタルスレッドに向けて前進

背景と課題

紙ベースの設計情報管理では、機械工具設計は改善できない

上川 氏機械工具事業部 技術部 製品設計課 課長 副主管
上川 弘二 氏

モノを作るとき、部品を削ったり穴を開けたりする機械加工が行われます。その際、工作機械に取り付ける刃物が切削工具や回転工具などの機械工具です。これら機械工具を製造・販売しているのが、日本特殊陶業の機械工具事業部です。

同部で設計情報のデジタル化に向けた検討が始まったのは2018年春のことでした。

機械工具を作るには、機械工具そのものの形状や寸法を設計し、素材を加工して仕上げます。このプロセスは従来、紙図面で行われていました。

「CADで設計したデータを紙に印刷して製造部門に渡すというやり方でも、これまでは何とかなっていました。しかし、『設計作業効率向上』『設計品質向上』『設計提案力向上』といった改善を成し遂げるには、データをそのまま生かすべきではないかと。そうすれば、ITは『道具』から『ビジネスを強くする武器』になると考えました」(上川氏)

同社で現在扱っている機械工具の数は、品番ベースで約6万種。その流用設計*1を担当する製品設計課では、年間3,000~4,000品番を設計しています。これまでの流用設計の基本的なプロセスは3段階でした。

[1]元図面を参考に、寸法や形状を変更した新設計の三面図を2次元CADで作り直す
[2]A3またはA4サイズの紙に印刷
[3]製品設計課の図面棚(5段×11本)に分類整理して保管

図面棚の紙図面管理には Microsoft Excel で作成した台帳を使用していました。

「『紙図面が正』というのがそれまでの考え方でしたから、設計者は、2次元CADで作った設計データを製品設計課のファイルサーバーに格納して完了。しかし、どのフォルダにどの品番の設計データが保管されているか分からず、また最新版の管理などもできていなかったので作業効率に大きな影響が出ていました」(廣瀬氏)

*1 流用設計:製作実績がある製品の設計情報を活用する設計方法

選定と導入

PLMと3次元CADを組み合わせ、設計情報をモデルとBOMで管理

廣瀬 氏機械工具事業部 技術部 製品設計課
廣瀬 将司 氏

このような経緯で始まった機械工具設計のデジタル化は、2段階のステップで進められていきました。まずは、製品ライフサイクル管理(PLM)ツールを導入して、設計情報を統合管理するための仕組みを確立。そのうえで、設計データを部品表(BOM)や工程表(BOP)と連携させるのに向く3次元CADツールを導入するという手順です。

「PLMツールとしてはいくつかの選択肢がありましたが、当部では『カスタマイズなしで使えるもの』を求めていました。また、機械工具の世界で進むISO 13399*2への対応に役立つ機能が標準で備わっていることと、当社の海外拠点でも使えるグローバル性も欠かせない条件でした」(上川氏)

これらの要件を満たすPLMツールとして、「Windchill」を選択。実装と導入コンサルティングについては、モノ作りの世界で豊富な経験と知見を有する日立ソリューションズに支援を依頼しました。

また、製品設計課の設計者が使う3次元CADツールには、「Windchill」と同じベンダーが販売している「Creo」を採用。同一ベンダーの製品同士であれば、片方のバージョンアップに伴うもう片方への影響が最小になるはずと判断したからです。

「Windchill」の導入・実装が始まったのは2018年5月のこと。日立ソリューションズはサーバーの構築を中心となって実施したほか、図面データを「Windchill」に登録する作業も支援しました。

それと並行し、「Windchill」の標準機能を利用したBOMの仕様検討にも着手。将来的には製造部門が使う製造BOMとして使えるように考慮したうえで、当面は製品設計課が使う設計BOMとして2019年4月から構築を始めました。

「Creo」の導入・実装は、2018年11月にスタート。日立ソリューションズはCreoの導入から、作成した3次元データを管理するためにサーバー構築する一連の作業を担当したほか、製品設計課の設計者に対する操作のレクチャーも行いました。その後は廣瀬氏が中心となって、機械工具の設計方法の確立と既存製品の3次元モデル化を実行。「Creo」「設計部品表管理」が本稼働した2019年8月以降に発生した流用設計は、「Creo」の3次元モデルとして設計されています。

このほか、廣瀬氏は「Windchill」の標準機能を活用して2種類のワークフローも構築しています。

「まず、製品設計課の中に閉じたワークフローとして、図面の検査・承認の流れを可視化する『設計図面承認ワークフロー』を2019年8月に稼働させました。営業部からの案件を受け付ける設計依頼ワークフローも10月に出き上がり、『Windchill』と『Creo』の導入・システム構築はひとまず完了しました」(廣瀬氏)

*2 ISO 13399:「切削工具の表現と交換」に関する国際規格

成果と今後

設計情報管理のデジタル化で、効率向上と品質向上を実現

「紙図面が正」だった業務プロセスを3次元モデルとBOMに基づくやり方に変えることによって、日本特殊陶業がめざした「設計作業効率向上」「設計品質向上」「設計提案力向上」は徐々に成果を上げつつあります。

「流用設計を3次元CADで行う場合、元となるモデルの一部を変更するだけでよく、図面全体を作図し直す必要がなくなりました。作業効率は従来の倍以上になり変更漏れなどのケアレスミスも発生しませんので、設計品質も向上しました」(廣瀬氏)

また、3次元CADによる設計ではモデルの作り方が標準化されるので、設計品質が一段と安定化。設計BOMを構築することによって、部品や素材をルール通りに管理・運用できるようになりました。

さらに、設計情報の管理をPLMツールでデジタル化することによって、紙図面に関わるコストも大幅に減少。年間3,000枚以上の用紙代と印刷費用、さらにコピー機までも削減できたほか、保管するための図面棚の増設も不要になりました。当面、既存の紙図面はそのまま残されていますが、廃番になったものを取り除いていくことにより、将来的には保管スペースの削減も考えています。

このほか、設計内容をチェックするための図面承認ワークフローが稼働を始めたことによって、検図や承認作業の漏れがなくなるとともに、どの段階で滞留しているかもリアルタイムで把握が可能となり、その結果、設計プロセスの期間短縮も見込めるようになりました。

このような成果を踏まえて、日本特殊陶業は「Windchill」と「Creo」を同社のモノ作りでさらに活用していくための企画に取り掛かっています。

2020年春には、韓国の現地法人にある設計チームも「Windchill」をインターネット経由で使用する予定。お互いが設計した情報を共有することで、設計情報管理のグローバル化を狙っています。3次元モデルを外部の製造協力工場にデータで渡すという計画も進行中です。

また、機械工具事業部全体のデジタルスレッド(Dth)*3の実現に向けて、製造BOMと工程表(BOP)の構築も検討中。機械工具ビジネスにおける同社の競争力を高めるための取り組みとして、「Windchill」の部品分類機能を活用してISO 13399への対応も果たしていく予定です。

「『Windchill』と『Creo』を使うことによって、デジタルスレッドの実現に向けて歩み始めることができました。そのスタートには日立ソリューションズの支援がありました。2つの製品を導入するプロジェクトはオンスケジュールで完了しましたし、バグもまったくありません。今後も、日立ソリューションズの豊富な経験と知見に期待しています」(上川氏)

日立ソリューションズはこれからも、デジタルスレッドに向けて前進する同社を支援していきます。

*3 デジタルスレッド(Dth):製品ライフサイクル全体をデジタル化してプロセスのトレーサビリティを実現すること

日本特殊陶業株式会社

スパークプラグ専業メーカーとしてスタートし、その構成材料であるセラミックスを使った各種製品にも事業分野を拡大。現在はスパークプラグ、グロープラグ、センサー、半導体パッケージ・基板、機械工具、医療関連製品、ファインセラミックスの製造・販売に携わる。機械工具とは、穴開けや切削などの機械加工で使われる極めて硬い刃物。セラミックスだけでなく、超硬合金、超高圧焼結体などの素材も使われている。

本社所在地 愛知県名古屋市瑞穂区高辻町14-18 日本特殊陶業株式会社
設立 1936年10月26日
従業員数 5,767人(単独 2019年3月現在) 15,994人(連結 2019年3月現在)
事業内容 スパークプラグ・内燃機関用関連品の製造、販売。ニューセラミックおよびその応用商品の製造、販売など
URL https://www.ngkntk.co.jp/

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本事例の内容は2020年1月8日公開当時のものです。

最終更新日:2021年5月21日