日立ソリューションズは、社会生活や企業活動を支えるソリューションを提供し、持続可能な社会の実現に取り組んでいます。

シリコンバレーでスタートアップ!

SXを本格化する

人財育成の新たな手法

他社に先駆け、日立ソリューションズがシリコンバレーにリエゾンオフィスを構えたのは2007年のこと。以来、この地に集積される最先端技術と手を組み、革新的なソリューションに磨きをかけてきました。このほど、シリコンバレーでの起業を支援するプログラム「スタートアップ創出制度」をスタート。SXの視点から社会課題に挑み、サービスを事業化できるグローバルな人財の育成をめざします。

対談の画像
中垣 徹二郎

DNX Ventures
パートナーシップアドバイザー

中垣 徹二郎

日本でのベンチャーキャピタル投資業務やファンド出資者を中心とする日本国内事業会社のオープンイノベーション、スタートアップを通じた事業機会の創出などを主に支援している。
市川 博一

株式会社日立ソリューションズ
グローバルビジネス推進本部
戦略アライアンス部

市川 博一

入社後、製造業向けSI、大手商社・サービス企業向け企画業務を担当。2010年からアメリカ・シリコンバレーへ赴任し、新規商材発掘業務を担当。2017年に帰国し、アメリカでの活動支援や、スタートアップ創出制度の設計・運用を担当。

世界で戦える力を。危機感の中で生まれた

新規事業創出のためのアイデア

シリコンバレーでビジネスをはじめたきっかけを教えてください。

市川:私の主な仕事は、最先端の技術や商材をいち早く見つけだし、お客さまにとって最適なソリューションに仕上げて提供するというものです。

IT業界の新しい潮流はシリコンバレーで生まれるものがほとんどです。2007年に、商材発掘のための拠点をシリコンバレーにつくったのもそのためです。しかし、ベンチャーキャピタルと連携しないことには、サークルやコミュニティーに入れてもらえないことがすぐにわかりました。

中垣さんと当社とのお付き合いは、この頃にはじまったものです。紹介していただいた商材を日本へ持ち帰り、ビジネス展開するようになりました。その後、中垣さんたちが率いるDNX Venturesさまの創立を機に、本格的な協創へと発展していきました。

シリコンバレー発の商材ビジネスは、今や当社の事業戦略の柱の一つに成長し、社内への影響力も大きなものになっています。

「スタートアップ創出制度」の着想は何から得たのでしょうか?

市川:今から十数年前に、当社で開発している日本のエンタープライズ向けの各種製品を、アメリカで販売しようと計画したことがあります。結果は、まったく売れませんでした。

理由の一つとして考えられるのが、プロダクトに対する考え方の違いです。日本では、お客さまのかゆいところに手が届くようなプロダクトが求められ、カスタマイズすることを前提にシステムを設計します。

アメリカではその頃、IDとパスワードを入力するだけで使えるSaaSがすでに主流になっていました。インターネット経由で、誰もが即座に利用することができます。ところが当社の製品は、構築するまでに数週間を要します。せっかく気に入ってもらえても、導入に時間がかかるシステムでは相手にしてもらえなかったのです。

当社には、世界で戦える製品がないと思いました。SaaSのようなプラットフォームの概念、デザイン設計、改修方法などと比較して、グローバルにビジネスを展開する組織としての強みに欠けていると痛感したのです。

新規事業を真剣に考える人財やモデルケースをつくらなければ、いつかマーケットは縮小していく。こうした危機感の中で、新規事業を創出する仕組みを制度化できないかと考え、思いついたのが「スタートアップ創出制度」だったのです。

対談で話す市川
「スタートアップ創出制度」とはどのようなものですか?

市川:まずはアイデアコンテストに2名1チームで参加してもらいます。北米をマーケットにしたプロダクトが前提です。最終選考会で勝ち残ったチームは、シリコンバレーで1年間、DNX Venturesさまからトレーニングを受けます。

トレーニングのプログラムはこの制度のためにカスタマイズされたもので、提案したアイデア がアメリカのお客さまに支持されるか、課題解決の役にたてるのか、実際にインタビューしながら検証していきます。アメリカの市場を知り、スタートアップに何が必要かを理解するためには、大きな発想の転換が求められます。

1年後、仮説検証した内容をもとに、ベンチャーキャピタルたちの前で再度プレゼン。アメリカで戦うに値するサービスかどうかのジャッジを受けます。可能と判断されれば、日立ソリューションズから独立し、資金調達をめざすことになります。 もしも、サービス化が難しいと判断された場合には帰国し、新規事業の創出に参加するなど、1年間の貴重な経験を活かしていただきます。

現在、3チーム6名が選出されています。順次、増員していく予定です。

中垣:メンバーは現在、DNX Venturesのオフィス内の一角に設けられた専用デスクでトレーニングを受けています。シリコンバレーで誕生したばかりの会社がしのぎを削っているコワーキングスペースのようなところで、大きく異なる文化やスピード感に戸惑いながら、刺激的な毎日を送っています。

きびしい現実もありますが、反面、アメリカにはスタートアップを受け入れる土壌があります。少しでもおもしろそうな話であれば興味を示してくれます。今、アイデアに対してのさまざまな意見を集約しているところです。

市川:新規事業のアイデアを募集する社内コンテストのようなものなら、世間にたくさんありますよね。こうした場合に懸念されるのが、赤字になったときの対応です。アメリカというまったく別の場所で、通常の事業と切り離して行うなら、アイデアを出した従業員が肩身の狭い思いをすることもありません。

自分たちで一からコネクションやマーケットをつくるのは大変ですが、DNX Venturesさまの力を借りることができれば、従業員の夢をかなえるための応援も可能になるのではと思いました。

対談で話す中垣

”スタートアップ的な会社”ではない。

本物の起業を支援する制度

DNX Venturesさまが本制度をサポートした理由をお聞かせください。

中垣:今までも日立ソリューションズは、シリコンバレーを代表するグローバルなスタートアップとの協創を非常にうまく進めてきたと思います。多くの日本企業のサポートをさせていただいていますが、成功例の見本になるものです。

すでにあるものを日本仕様に変更する。それもビジネスですが、自分たちで事業を創出したい。そこにチャレンジしたいという強い思いを、日立ソリューションズから感じました。

このプログラムを卒業したらすぐに、ベンチャーキャピタルから出資を受けることをめざすぐらいでないと、結局は中途半端になると思いました。他の企業からは、社内事業を社外に出して大きくしたいといった相談をよく持ちかけられます。多くの場合、親会社として経営権を持ち続けようとします。こうして誕生した大企業のおまけのような“スタートアップ的な会社”、オーナーシップがない会社は、私たちにとっては応援しづらい存在です。

かたやこのプログラムは、独立した本物の起業を支援するというものです。投資はするのに、会社は任せる。しかも、路頭に迷わないように体制はつくっておく。

こんなに気前の良い話はありません。まさに至れり尽くせりです。会社の本気を感じ、ぜひお手伝いしたいと思いました。

市川:社外からの問い合わせも多数ありました。過保護なプログラムだとよく言われます。正直、リターンは何もありません。莫大なお金がかかるだけです。

現在、当社にはスタートアップを経験した従業員はほとんどいません。そういう中で手をあげる人を全面的にサポートしたいと思っています。社内のFA制度として、本人の意思が尊重されるという文章も規定に盛り込みました。

それでも起業や退社となると、やはり勇気がいるものです。セーフティーネットは必要だと判断しました。

もし仮に結果が駄目でも、ゼロにはなりません。得難い経験が残ります。特別な人財として再び迎え入れたいと考えています。今までになかったアイデアが必ず生まれるという確信があります。

若い人が失敗を恐れずに、チャレンジできるチャンスをつくりたかったのです。

中垣:私たちの役割は、スタートアップした会社をいかに強くするか。最終的にはセールス体制もつくり、上場をめざすといったところまでお手伝いします。

日立ソリューションズは、すでに確立したビジネスを持っていますが、従業員の方には、従来の価値観を捨てて学び直してもらう必要があります。起業家に求められる知識や考え方を身につけていただく。そのために用意したコンテンツやプログラムを使ってわかりやすく伝えています。まずは投資を受けられる会社にすることが目標ですから、是正すべき点はきびしくチェックさせてもらっています。

市川:DNX Venturesさまの協力があったからこそ実現できたプログラムです。最も頼れるベンチャーキャピタルに、インターンのように従業員を託し、常に身近な場所で指導してもらえることに感謝しかありません。

誰もがチャレンジできる。

ワクワクするような会社にしたい。

本制度は、これからの事業にどのような効果をもたらすとお考えですか?

市川:起業は難しいチャレンジですが、達成できなかったとしても、知識や経験は無駄になりません。会社にとっても、次の人財育成につながりますし、SX化の財産になります。

昨年、アルムナイネットワーク(退職者のコミュニティー)を立ち上げたのですが、その中には海外勤務経験者も少なくありません。中には、本制度に強い関心を示してくれているメンバーもいます。

新卒、キャリア採用でも、こうしたチャレンジができる会社であることがアピールポイントになればうれしいですよね。

中垣:事業部内の話ではないという点が大きいと思います。従来の人事考課的な評価軸は通用しません。人財に求めていることの質が違っているように感じます。

昨日まで、お伺いをたてていた組織そのものがなくなるわけです。アドバイスはベンチャーキャピタルがしても、決めるのは自分です。今までとはまったく異なる行動パターンが求められています。

市川:課題を考えるということもポイントの一つになっています。システムインテグレーターは、通常、自分で課題を考えることはありません。お客さまの課題と向き合うのが仕事だからです。

純粋に、企業や人が抱える共通の悩みについて考えはじめると、当然、社会課題へと行きつきますよね。実際にエントリーされたアイデアも、女性の社会進出はなぜ進まないのかという問題提起や、倫理観やダイバーシティといった課題をテーマに掲げるチームがほとんどでした。

自ら社会課題に取り組む姿勢は、SXの視点からも良い訓練になっていると感じています。

中垣:いろいろなチャレンジがつまった制度だと思います。すでにあるものを成長させるのではなく、まったくゼロの状態から生みだす。グローバルな課題を抽出して、そこから解決策をつくりあげることは大変です。日本の企業全体に問われている姿勢だと感じます。

日立ソリューションズは、この制度を通してグローバルな人財育成と新規事業、二つの大きなことに同時にチャレンジしています。

人財育成は、組織変革そのものです。革新を促す気風で事業を成長させている姿は、SX進展の良いモデルになると期待しています。

市川:ワクワクするような会社にしたいというのが、当社のトップの考えでもあります。これからの事業創出に欠かせないグローバルな視点と、新しい発想をもった人財のチャレンジを待ち望んでいます。

対談で話す市川と中垣
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